fiction 

<< September 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>


2010.09.14 Tuesday  スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- . -



2010.09.14 Tuesday  out of white

  僕たちはいつも「白線の外側」を歩いていた。
 姿かたちは見えるのに、駅のホームでは誰も入りたがらない線の向う側、きみは生きた世界に近い方を、僕は死に近い方を、ただひたすら手を繋いで歩いていた。


 

 僕たちはある駅の改札口で待ち合わせをしていた。神経質なほど、腕時計と携帯電話を交互に眺めながら僕はきみを待っていた。いつも世界は僕中心にまわっていたはずなのに、今僕はきみを待っている。きみのために時間を使っているのだった。
 僕たちは今までに一度も会ったことがなかった。白いワンピースと、右腕に銀の腕時計をしている女性、というのが唯一のきみを見分ける手掛かりだった。きみが嘘をついていなければ、僕らは11離れているはずで、僕が32才で、きみが21才のはずだった。僕たちはお互いのことをなにも詮索しなかった。きみがどこに住んでいるのかも、どこの大学に通っているのかも、まして名字や誕生日さえも僕は一度も質問しなかったし、きみも僕のプライベートなことについては一切質問してこなかった。ただ僕の知ってほしいことをきみに伝えるだけで、きみはというと退屈な日々のようすをぼくに吐露するといった調子だった。その果実のように甘酸っぱい21才の不安を、僕はなるべく柔らかく、そしてパステルカラーで包み込むことを心がけていたけれど、きみがどんな風に受け取っていたかはわからない。
 とにかく僕たちは、世間の男女が初めに訊き出すような、お互いの普遍的な事柄についてをまったく知らなかった。白いワンピースと銀の腕時計、そしてきみが余りにも魅力的な21才だということ。それだけ。きみは僕について何を知っているんだろう。同じくらい何も知らないに違いない。君がぼくについて何にも知らないのをいいことに、ぼくは自分の仕事についてとか、趣味とか、哲学についてまで語り出す始末だったわけだけど。
 「駅構内は全面禁煙ですよ」
 突然駅員に背中を叩かれた。僕はゴメンとだけ言って煙草を口元から外した。駅員は聞こえないように舌打ちをして僕の元を去って行った。僕はもう一度煙を肺一杯吸いこんで、ゆっくりと濁った息を吐いた。煙の行き先を見つめるのが好きだ。若い女の子が嫌そうな顔でこちらを見る。この国がだんだんとこの煙を嫌いだしてから、僕は続けていた禁煙をやめてラッキーストライクを吸っている。嫌われているものを愛するのが好きだった。時代とは常に逆行していたかった。それは過去に向かうという意味ではなく、作りだされた渦のようなものを逆らいたいという方が近いかもしれない。舌に苦みが残る。12時37分、待ち合わせは13時。
 きみは毎日を生きるのが下手で、不器用なくせに、妙に計算高いところがあるのを僕は知っていた。きっと待ち合わせの15分前位に来て、僕のことを待つだろうと思った。だから僕はすこし意地悪をしようと思った。僕を待たせているということが、緩やかに、それでいて激しくきみを緊張と計算外という動揺に陥れるだろう。暗黙の了解であるかのように、今日は一度も連絡をとっていない。夜きみが入念に時間と待ち合わせ場所を確認したきりだ。来るのかもわからない。騙されているのかもしれない…
 「あの」
 罵声に近い怒鳴り声だった。さっきの駅員だった。
 僕はまた、ああゴメン、と言って煙草を床に落とし、そして踏んで火を消した。靴底があるのに、じんわりと熱さを感じている気がしてしまう。
 「あ、吸いがらちゃんと捨ててくださいよ」
 吐き捨てるように駅員は言った。僕は一度も目を合わせなかった。
 12時43分、そろそろきみが来る頃じゃないだろうか。




2010.09.01 Wednesday  割合

指先から、喉元から伝わる感情を、唇ではうまく表現できない僕は、触れている箇所でしか熱くなれない。
ただその部分だけが素直で、それでいて苦しみを抱えすぎている。

半分もってあげるよという誰かの申し出は断り、体内で消化しようとした挙げ句、その責め苦は僕のcapacityをゆうに越えていたようだった。
それは濃すぎる液体として溢れ出すわけだが、この群青色が濁ったような目玉からなのか、はたまた別の部分からなのかは、きみの想像に任せるとしよう。




2010.08.31 Tuesday  ジーニアス

天才とは99%の努力と1%の才能という言葉が嫌い。

天才とは99%の才能と1%の努力。
天性のなにか、体内や脳内に潜んでいる感性を、努力で外界に導き出すことができる人。
その99%をなんらかの力でアウトプットできる人。




2010.08.31 Tuesday  SF

睡眠はある種のタイムスリップだと思っています。
記憶は前後しかないのに、三時間ないし十二時間、意識がない間もせっせと世界はめまぐるしく動き続けているのだから。
一瞬のうちに少し先の未来にいくという感覚、ちょっとしたタイムスリップでしょう?




2010.08.31 Tuesday  take him to me

四季がゆらぐ日本なんて。
太陽が照りつける九月は秋とは呼べないし、夏の次に突然冬が来るなんて事態は全力で回避しなくてはならない。
いい匂いも、突然の寒さも、極彩色がセピア色に霞んで、徐々にモノクロを呼び出す風景の移ろいへの演出も君しかできないというのに。
あの寂しさは夏が終わることへの未練からくるのか、冬が始まることへの漠然とした不安からくるのか、そのどちらもなのか、はたまた寂しいと感じる人間の身勝手さなのか。
あの張り詰めた、指先で触れたら簡単に割れてしまいそうな、繊細で緊張したガラスのように透明な空を見上げるうちに、その青さは瞳に溶けてしまいそうになる。
君の潤んだ黒い瞳がいつも泣きそうにみえるのは秋の空の青さを華麗に反映してしまうせいなのか。
夜の長さに戸惑いながら、白い月光に導かれた悲しみを、隠すように、抱きかかえるようにしながら、静かに眠りにつく。永遠に朝がきませんように。




2010.05.04 Tuesday  カーテンコール


美術鑑賞に関する持論。

美術そのものは興味があるしすごく好きなんだけど、いままではかっこつけたいとゆうか、知ったかぶりたいから、絵を見て、いいなあこれとかなるほどとかさすが彼の絵だねとか空虚な台詞を口にしてみたりそう思おうとしてる自分がいた。
でも結局、すごいひとの書いた絵なんて自分とまったく次元のちがう脳みその持ち主が努力と才能の血がどくどく流れた腕で書いてるわけだから、絵をやったこともなければ彼の一生の断片を目にしたこともない自分が、はあんとか言って理解できるわけがないんだよね。理解しようとすること自体が傲慢なことだし彼らしい絵だねなんて言うことは無知にもほどがある。まあそこは美術のもちうるオーラとはやしたてる環境が人を知ったかぶりにしてしまうんだけど。
べつに、なにこれ?でいいんだよね。なんかすごい。とか全然意味わかんない。とか。
名声とか作者名がなかったらきっとただの絵に成り下がるんだよ、一般人の前だったら。
タイトルと画家に踊らされてるだけ。
それでも絵って知らない誰かやもう死んだ誰かが何かを伝えようとするエネルギーが平面から飛び出してくるから見てみたくなるんだよね。
だからわたしは写実的なものより圧倒的に抽象画に魅力をかんじる。
テレビでちらっとうつされた小学二年生が図工の時間にかいたわけのわかんない抽象画に泣いたことあるからね。本当に。
幼い普通の小学生が書いてるってことは紙面にリアルしか存在しないんだよね。だから涙が出たのかなあとか思うけど。
とりあえずわたしたちレベルが批評とか論評しようとすること自体馬鹿らしいというか。絵をかくひとは絵をかく視点から見れるからまた違ったなにかを抱くんだろうけど。
だから美術館って場所は大好きだけど、すごい絵が嫌いだなあと思ったの。最近。好きなふりからやっと脱却できたよ。
ずっと認めたくなかったことだけど、わたしイギリスもすごくつまらなかったしね。
ホストは本当に本当に愛してるし一緒に過ごせた時間は愛しくてしょうがないから、少し語弊があるけど、あの二週間てただそのホストへの愛情を深めた以外にはすごい退屈で空虚だったの。なんのショックも受けなかったし。
ただイギリス好きな自分を演じてた気がする。よ。
もちろん好きだしすてきなカルチャーだなと思うことたくさんあったけどね!うん。
そう思ってもいいよ、許してあげなよって自分で言ってあげられたのも全部全部。


関係性より大切かどうかだと思ってるけど、付き合うってゆう契約を結びたい自分に引く。




2010.04.25 Sunday  ユニセックスアンドセックス


全部壊されて、全部さらけだして、否定されたいと思っていた。
賢い生き方も、うそつきな部分も、つねになにかをまとって、つねに誰かを騙して、寂しそうに笑っている自分を完璧に否定されたいと思っていた。それは馬鹿な選択で、なにも賢いことではなくて、素直に単純に生きることのほうが、どれほど美しいことなのかっていうことを、突き刺してくれる人に出会いたかった。

不純すぎる動機なのに、いつのまにか求めていて、それは肉体的であるとか、精神的であるというよりは、ただただ、壊されることへの快感、というか。
他人を理解するということは冷静になって考えてみると有り得ないこと。
君の気持ちがわかるよなんてただの戯言。

わからない上で、一体になれないもどかしさのなかにある、そういうものが、わたしにとっては否定されることであったり、壊されることであったり、恥をかくことなのかもしれない。
それは、普通に生きてるなかで絶対にしたくない、守ってる領域にある、かっこ悪い部分を見せること、で、それを見せてもいいと思えたことが、なんかもう、もうもうもう。



知るほど遠くなって、息ができないほど密着していても、幻想としか思えなくて、
でもこの瞬間を確実にいま求めているのは事実だったりするから。

隣の席に座っているという沈黙に泣きたくなる。
東京の夜景は冷たすぎる。高速道路は短すぎる。




2010.04.05 Monday  milkcrown and

つめたいよ、夜が。
白い息がミルク色じゃないよ。排気ガスの色。
目玉が360度に動きすぎて、いっかいとりだしたい。血を吐けば落ち着くのか。
ただそういう場所。




2010.02.26 Friday  蜜と唾

欲深いから絡み合いたい。官能と欲望と快楽への世界へ突き落とされ、相手の名前もしらず、自分も名乗らず、ただ、ただ求め続けることを知った。
目の前にある唇を、それ以上を求めて求めてやまない。

「死んじゃうよ?」
という言葉に
「いいよ、殺して。」
と彼女は言った。本心かはわからない。ただ自分の発言に一瞬戸惑い、さらに、溺れた。




2010.02.21 Sunday  そういう迷い


いつも通りに呼吸をし、なにかを食べ、会話をしていた。そのつもりだったのに知らない野生の動物が見慣れない新人をみるかのような目つきでこちらを見ていた。
睨んではいなかった。不思議そうにしていた。ここでは見かけないなあ、でもうちにはおいてやるキャパシティもないなあ、能力はなさそうだ。
いつも通りに呼吸をし、会話していた僕は、おもむろにいつものようにその動物に話しかけていた。どうしてそんな目で見るんだよ、僕だよ、僕。
動物は一呼吸おいて、笑った。よく乾いた声だった。考えてもごらんよ。彼は吐き捨てるように僕に言うとその場から消えた。
なんだったんだろうねえ、と隣にいた君に言うと、知らないなにかをみるような瞳で僕をみつめ、答えなかった。
内容を理解していないというよりは、言語さえもわかっていないかのような。いったい君までどうしたんだい、おかしな顔をして。


誰も僕を知らなかった。自己紹介をしても、挨拶をしても、きょとんとして見つめるだけだった。




いろんなところへ出歩いて、時間がたったあるとき、あの動物に出会った。
まだいたのか、お前がいるところではないだろう。
じゃあ僕はどこにいけばいいんだろう。
尋ねると、どこにいくかではなくここでなにをしていくか考えなさい、といわれた。ここでなにをしていくかなど考えたこともなかった。脱出することばかりよぎっていた。
遠くの空で鳥が小さく叫び、白い雲がゆっくりと頭のうえをとおっていく音がして、

いつものように会話していた。
どうして泣いてるの?と君は言った。僕はなにもいわずに深くキスをした。酸欠になるくらいに。




/ 1 / 13 / >>

Profile

Archives

admin